私の近況
立命館大学法学部、早稲田大学法学部、名古屋学院大学法学部で通算46年間大学の教員として教育に従事してきた。名古屋大学や金沢大学の助手の期間を入れればもう少し長い期間大学に勤めてきた。しかし、この期間で私は何を学生に残すことができたのであろうか。20年以上前のことになるが、友人の勧めで「まあだだよ」という映画を見たことがある。決して豊かではない第二次世界大戦やその後の占領下での時代に、教えた学生に慕われ、明るく生きる大学教授を主人公にした映画である。内田百聞先生をモデルにして制作されたようである。フランスの詩人ルイ・アラゴンもナチスドイツに占領された戦時下の下で「教えるとは希望を語ること」「学問とは永い永い忍耐」と書いている(『ストラスブール大学の歌』「フランスの起床ラッパ」)。私はそのように厳しい時代に教壇に立ったわけではない。それだけになおさら学生諸君に希望を与えるような教育ができたであろうか。何かを残すことができたであろうか。自分を問い詰めようとするもう一人の自分がいる。そもそも大学の教員として適格ではなかったのか。
そのような中でも、本年4月1日より私が大学院時代に指導したT君が早稲田大学の准教授に赴任した。また、学部時代に私のゼミにおり、私の友人である林秀雄先生の下で国立台湾政治大学の大学院で学び、修士号、博士号を取得したK君が本年8月1日付で国立台北大学助理教授に就任するという便りを頂いた。私自身は余り役割を果たせなかったけれども、彼らを含め私の教え子達が私ができなかった部分を達成してくれることを期待したい。私はもう少しだけでも学問の道を進めるために、また、その成果を社会に少しでも還元できるように頑張ってみたい。
立命館大学法学部の樋爪誠教授から、本年7月7日13時30分から帝国ホテル東京で「立命館大学法学部同窓会」があるとの知らせを受けた。立命館大学を去ってからすでに22年余経過しているが、私のゼミの卒業生T君が記念講演を行うとのことでもあり、私のゼミの卒業生であることを表示して出席の返事をした人もいるとのことである。私も出席する手続を執るように樋爪教授に依頼した。かっての教え子の成長ぶりを知ることはとても嬉しいことである。